ゴボウのタネ

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日本では野菜としてお馴染みの「ゴボウ」は
外国ではあまり人気がない?

平安時代に中国から薬草として伝わってきたといわれているゴボウ。古くから私たちの食卓に上がる風味豊かな野菜のひとつで、「きんぴら」など馴染み深い料理でも知られています。
また食物繊維を豊富に含むことから、便秘の解消や大腸がんの予防、糖尿病などの生活習慣病予防に効果があるとされ、健康野菜としても大人気!
ところが、日本でこんなにもポピュラーな「ゴボウ」は、他の国では知名度は高くないといいます。
海外ではちょっと端っこに追いやられてしまっているゴボウですが、トーホクではコツコツ研究を積み重ね、家庭菜園でも手軽に作れる健康的でおいしい野菜として開発しています。今回はそのゴボウのタネとりについてご紹介します。

まずは親となる「母本(ぼほん)」を育てる

「母本」とはタネをとるための親=植物体のこと。まずは、この「母本」を育てることから始まります。
栽培は春から一般的な栽培に準じて始めます。ゴボウは同じ土地に連作すると病気の発生が多くなり、1m以上の深さまで根が伸びますから、深くまで耕された土と、水はけの良い畑を準備しなくてはいけません。母本の養成中に病気などに感染すると生育が充分でなく品質の良いタネが採れませんから、細心の注意を払って畑の管理をします。そして秋に、十分に成長したら根元から掘り取ります。

母本養成中のゴボウ畑の様子

掘り取り作業の様子

すぐれた母本を選ぶ

掘り取ったゴボウを作業場に運び、優れているものを選ぶのが「選抜」。掘り取りは芽をつぶさないよう、ていねいに行わなければなりません。また選抜作業は長年経験を積んだ熟練者が担当します。
選抜のポイントは、品種特性が備わっていることは当然のことですが、
●素直に伸びている 
●力強く太り、割れもない 
●首がよく締り、尻まで肉付きの良い
●腐れなどの病気にかかっていない
というのが重要ですので丹念に調べます。こうして厳選されたゴボウがタネをとるための親=採種用母本となります。

写真のようなゴボウの山の中から採種用母本を選び出します。
一見どれも良いゴボウのように見えますが、厳しい基準を設けて選抜し、通常はこのうちの約1割にしぼり込みます。

品質の良いタネを育む場所

発芽力の高いタネに育てるには、タネをじっくり充実させる必要があります。そのためには、夏は涼しく雨の少ない気候が適します。適した場所に採種用母本を運び(場所は企業秘密で〜す!)、冬が来る前に植え込むのです。翌春、母本の株元から芽が伸びて葉が茂り、夏前には約2m位に育ちます。
7月中下旬に紫色のアザミに似たトゲのある大きな花が咲くと、その後2cm位のタネの詰まった実がなります。それを8月下旬から9月にかけて、充分に熟していることを見極めてから、ひとつひとつていねいに手で摘みとります。その実を雨のあたらないところに取り込み、天日で乾燥させて最後に脱穀機でタネを取り出します。

花芽が伸びてきた採種母本(6月頃)

開花盛りの様子(7月下旬頃)

ゴボウの花とタネの詰まった実

天日で乾燥中の実(9月頃)

ロットごとの検定

採ったタネは採種ロットごとに検査されます。
まず発芽検定において規定の発芽能力を持っていることを確かめます。そして実際に栽培を行い、品種本来の特性がきちんと備わっているかどうかを確認します。

検査の為に栽培されたゴボウは、収穫後ロットごとに並べ、問題がないことを関係社員全員で確認します。

このようにしてゴボウのタネは採種されます。ところでここで紹介しましたゴボウはF1品種・交配種ではなく、固定種あるいは一般種と呼ばれる作物です。固定種はF1品種に比べて生育の旺盛さや特性の揃いが若干劣ります。そのためたくさん植えつけるとその中には偶然にも優れたものが出現する可能性もありますが、中には劣るものもある訳です。ですから採種時に一つ間違えるとその品種として必要な特性、例えば味や食感などを失い、品種が崩壊する可能性もあります。単に花を咲かせてタネを採ることはできても、品種の優れた特性を維持し、病気に汚染されてない、そして揃って発芽し、素直に生育するタネを毎年供給し続けることは、プロならではの技術が必要なのです。