ニンジンのタネ

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タネの採種地選びがとても大切

タネは、やっぱり国内産のほうが安心できると思う方も一部にはおられるかも知れません。
でも、私たち種苗メーカーは、最も良いタネが採種できるなら、国内でも海外でも関係なくその土地を求めていきます。そして、現地の農家さんと一緒になって採種栽培の技術を積み上げていくのです。
今回ご紹介するニンジンは、タネを直接畑にまき、収穫までそのまま管理する作物ですから、とくに発芽力が収穫物のでき具合に大きく影響します。力強く発芽するためのタネの充実度は品種の能力を左右し、採種地選びが品種の運命を握っていると言ってもいいでしょう。

ニンジンの採種適地はどこ?

野菜の種子生産を考えるとき、まずはその野菜の発祥地や今も野生種が存在する場所を考えます。
ニンジンの原産地は、中央アジアのアフガニスタン周辺。また、現在野生ニンジンが存在する場所は世界にいくつかあり、いずれも極端な冬の寒さがなく、春から夏にかけては穏やかな天候で乾燥しているところです。
このような場所の中から優れた栽培技術を持っていて、貿易相手国としても適当かどうかなどを見極めながら候補地を選びます。
このようにして選定した候補地でも、様々な問題が発生します。
ひとつは野生ニンジンの種子の混入。もうひとつは、畑以外の場所に自生する野生ニンジンから、知らない間に受粉されて実ってしまう種子が混入してしまうこと。
野生ニンジンの種子の混入については、移植栽培によって本来採種したい株を先に育てれば解決します。畑以外の場所で自生する野生ニンジンは、採種地の周辺を徹底的に見回って引き抜くという作業で解決しています。私たちはこれらが現地でできるかどうかを検討し、原種を持って採種地に出かけるのです。
それでは実際の採種地をご案内しましょう。

タネまき~移植

まず原種のタネをまき、採種用の母本を養成します。管理された苗床を用いて慎重に行います。

トーホクのニンジンの多くは交配種(F1品種)ですから、原種には雌系統と雄系統があります。それぞれは花の咲くまでの日数が違うことがあるため、これら両親系統の開花期が同じ時期になるようにまき時期をずらして株を育成します。

一定の大きさになったら掘り取ります。この段階で根の異常や生育の悪い株は除かれます。

掘り取ったニンジンは親系統ごとに採種する畑に運び、列状に植えつけていきます。

開花~収穫

開花までの間はニンジンが順調に生育しているか、畑の周辺に野生ニンジンが生えていないかを確認するのが大きな仕事です。担当者の最も気を使う仕事のひとつで、入念に調べてまわります。

開花が始まる前には最終的に野生ニンジンがないことを、畑中くまなく歩いて確認します。

交配種ですから雌系統と雄系統で開花が一致することが必要です。タネまき時期をずらしてもその年の天候によっては、写真のようにぴったり一致する時ばかりではありません。その年の天候と開花した日を記録しておき、次の採種に役立てます。

ニンジンは虫媒花と呼ばれる花を持つので、採種ではミツバチに働いてもらいます。ミツバチ業者に連絡して巣箱を持ってきてもらいますが、働きの悪い群の入った巣箱もあるので、しっかり観察してダメな巣箱は取り換えてもらいます。

ニンジンの花は一気には咲かないので、場合によってはみのり具合を見極め、みのりの良い枝からひとつひとつ手で摘み取ることもあります。摘み取りは、みのったタネが落ちてしまわないように、ある程度湿気のある朝のうちに行います。

刈り取ったタネは強い日差しを避けて風通しを良くした状態で乾燥させます。全体にむらなく乾燥させるため、一日に数回上下を反転させます。手間はかかりますが、その分品質は向上します。その後脱穀されて日本に運ばれます。

検査~出庫

日本に到着したタネは、正常に発芽するか病気にかかってないかを調べます。さらにロットごとに栽培して、品種に間違いがないこと、野生のニンジンが混じっていないことを確認します。

おわりに

このようにして採種されたタネは最終的に精選され、商品として袋詰めされます。タネ袋の裏には時として外国の国名が書かれていますが、日本で育成された原種が現地の採種適地でみのり、そのタネが日本に戻ってきたためです。
トーホクでは良いタネをお届けするため、今後も最適採種地を求め、現地での技術向上に努力していきます。