園芸講座⓭
石灰の役割と種類について- 小
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石灰(せっかい)の役割
日本のように雨が多い国では土中のアルカリ物質が流れてしまい、土は自然と酸性になりがちです。土が酸性か、アルカリ性かは植物の生育にとっては重大なことで、ほとんどの野菜は酸性土壌を嫌います。また酸性土壌だとカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ成分が少なくなって、有益な土中微生物にも影響を与えてしまいます。微生物の働きを活発化させて土のなかにある有機質の分解を促しフカフカの土(団粒化)にする上で、アルカリ分を含む石灰(カルシウム)を施して良く耕し、植物にとって適切な状態にすることが必要です。
石灰資材の種類
①苦土石灰
カルシウムの他に苦土(マグネシウム)を含んでおり、苦土カル、炭酸苦土石灰の名称でも市販されています。マグネシウムは植物の光合成に不可欠な成分で、カルシウム同様不足しがちなので酸性土壌を矯正する際に同時に補給できる特長があります。栽培直前に化成肥料と同時に施しても大きな問題はありませんが、水に溶けにくいので効果が表れるには1~2週間かかります。できればタネまきや植え付けの数週間前に施用して十分耕して馴染ませておきましょう。
②有機石灰
主に貝やカキ殻や卵殻を砕いたもので、水に溶けにくいので効き目は穏やかですから、作物のない時期にまとめて施用しておくと便利です。なお施用後直ぐに作付けできるものも販売されています。
③消石灰
消石灰はアルカリ性がとても強く速効性もあるので酸度を早く、また大幅に変えたい時に便利です。ただし化成肥料と同時に施すと化学反応を起こしてガスが発生しますので、化成肥料を散布する2週間以上前に施すことを厳守し、馴染ませるようによく耕しておく必要があります。肌に触れると炎症を引き起こし目に入ると失明の可能性もあるので取り扱いには注意が必要で、管理ができる菜園家向けです。
④生石灰
安価ですがアルカリ性が強く水と反応して発熱し、保管中に火事になる場合もあります。小規模な家庭菜園での利用というより、プロの農家さん向けの資材です。余談ですが菓子などについている石灰乾燥剤も生石灰です。時々石灰資材として使えますかと質問されますが、水と反応して発熱して植物の根を傷めるなど悪影響が出ますのでやめましょう。
石灰資材の使い方
菜園の土の酸度がどうなっているかは市販の土壌酸度計あるいはpH測定キットを使って調べることができます。土壌酸度計を使う場合、菜園が乾燥している場合は水をまいて土を湿らせ、また数カ所測定して平均値を参考にします。
市販の石灰資材には粉末状と粒状の商品があります。粉末状の資材は風のある日はうまく散布できない可能性があるので、あらかじめ土と混ぜてその土を広く散布しましょう。また粒状の商品の場合は溶解に時間がかかることを考え、余裕をもって施用しましょう。
野菜の種類によって最適の酸度は異なります。タネのパッケージには一般的に必要な苦土石灰の量を示しておりますが、菜園の酸度(pH)を確認して必要に応じて調整してください。通常pHを1.0上げるのに必要な苦土石灰の量は、1㎡当たり約200gですから参考にしてください。
おすすめは苦土石灰
石灰には上に紹介したように様々な石灰資材がありますが、トーホクでは作物への効果と扱いやすさにおいてバランスの良い石灰資材ということで苦土石灰をおすすめしており、タネのパッケージには苦土石灰の施用量を示しております。ただお手持ちの消石灰を用いる場合、アルカリ性が強いのでこの苦土石灰の施用量の約70%の量で、化成肥料を散布する2週間以上前に施してください。また散布時は必ずゴーグル・マスク・手袋を着用します。