第4回 私にとって効率のいい野菜は?

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もっとも効率のいい運動とは

 定年まで残り2年、半農半Xの後半生を思い描きながら、野菜づくりとともに体力づくりにも余念がありません。この2年間、週1回のペースでボクシングジムに通っています。万事に効率を求める私としては、「ボクシングほど効率のいい運動はない」と確信しているところです。

 ボクシングジムでは、自分のペースで運動するわけにはいきません。ゴングを合図に3分間、休みなく動いて30秒休憩。また3分間動いては30秒休む。この繰り返しです。私の通常メニューは、筋トレ1ラウンド、シャドー2ラウンド、ミット打ち2ラウンド、マススパーリング5ラウンド、30秒間の連打を20回、サンドバッグ3ラウンド。これを1時間20分ほどでこなします。

 もっとも楽しく、そして苦しいのがミット打ち。元世界チャンピオンが構えるミットに向かって、一心不乱にパンチを打ち込みます。3分間、全力疾走するようなもので、真冬でも滝のような汗が出ます。時間あたりの運動量という点では、一般的なフィットネスジムでのトレーニングをはるかに上回るのではないでしょうか。

手間を省けば報いもあるさ

 週末菜園家として、野菜づくりにも効率を求める私。しかし、効率を重視しすぎると思わぬしっぺ返しを食らうこともあります。写真をご覧ください。夏にエダマメを収穫した畝で、マルチを張ったまま、土をまったく耕さずにダイコンとニンジンを混植したところ、ご覧のとおり、すごいのができてしまいました。

思わず畑で記念撮影。何に見えるでしょうか?

こんな形になったのは混植したせいではなく、耕さなかったから

 おそらく、土の硬い部分に根が当たって変形したのでしょう。手間を省いた報いといえそうです。もっとも、すべてが変形したわけではなく、まっすぐなダイコンやニンジンもちゃんと収穫できました。まあ、こうしたおおらかさも家庭菜園の魅力のひとつ。失敗も含めて楽しめるのが、家庭菜園のいいところです。

それでも効率のいい野菜を作りたい

 さて、本題です。かけた手間に対して、どれだけの収穫の喜びが得られるか。そんな観点から、私がとりわけ優秀だと思うのがエンドウとソラマメです。タネまきが簡単なわりに、収穫の喜びは大きい。

 老眼が進んだ私にとって、タネまきは年々、鬼門になっています。タマネギやアブラナ科野菜のタネは、土と同化してしまって、もはや見分けがつきません。ふだんから老眼鏡が手放せず、仕事用に2つ(画面を見る用と書類を読む用)、さらに家の中用、農作業用と使い分けているほどです。タマネギのタネをまくときは、いちばん手元が見やすい「書類を読む用」に掛け替え、目を凝らして作業します。

 それに比べて、ソラマメとエンドウのタネはなんと扱いやすいことか。タネまきにかかる手間は、タマネギの10分の1にも満たないほどです。

ソラマメは贅沢品、エンドウは実用品

 野菜には、タマネギ、ニンジン、ダイコンなどの「実用品」と、スイカ、エダマメなどの「趣味の品目」があると、かねてから思っています。その点、ソラマメは贅沢品。採れたてをグリルで焼き、キューッと冷酒をやる。これぞ至福のひとときです。

 一方、エンドウは実用品。エンドウには「絹さや」「スナップ」「実えんどう」の3タイプがありますが、なかでもスナップエンドウの実用性は際立っています。さやの状態に応じて、さまざまな食べ方ができるのです。まだ豆が十分に膨らんでいない若いさやは、絹さやと同じように使えます。豆が膨らんできたら、さやごと生で食べてもよし、ゆでてもよし。さらに収穫適期を過ぎると、さやは筋張ってきますが、中の豆はグリーンピースとして楽しめます。

同じスナップエンドウなのに、厚みはこんなに違います。どんな大きさで摘んでもOK

 つまり、絹さやと実えんどうのいいところを兼ね備え、収穫のタイミングによって3通りの食べ方ができる。なんとも効率のいい野菜ではありませんか。

両方とも育苗するのが確実

 これからやってみようという方のために、栽培のポイントをおさらいしておきましょう。畑に直接タネをまくと、鳥に食べられる心配があります。そこで私は、必ずポットで育苗しています。

 エンドウもソラマメも、直径9㎝のポットを使います。土が流れ出ないよう、細かく切った鉢底ネットを底に敷き、赤玉土の細粒を入れ、その上にタネまき培土を詰めます。エンドウは3粒、ソラマメは1粒ずつタネをまきます。私の経験では、どちらも発芽率は90%以上で歩留まりのよさに惚れ惚れ。

ソラマメとエンドウの発芽は力強い

 エンドウは本葉3〜4枚、ソラマメは本葉2〜3枚になったら畑に植えつけます。毎年困るのが、できた苗の数に対して畝の長さが足りなくなること。エンドウは株間30㎝で植えますが、ソラマメは本来50㎝ほど空けたいところ。それでも、せっかく育てた苗を捨てるのはもったいないので、こちらも株間30㎝で強引に植えてしまいます。家庭菜園では、よくある話ですね。

自転車の後ろカゴにのせて畑へ

冬にしっかり根を張らせる

 植えてから注意したいのは、凍害への備えです。エンドウもソラマメも、株が大きく育ちすぎると凍害に遭いやすくなります。そこで、元肥は入れず、冬越しの段階では「ちょっと小さいかな」と思うくらいに育てておくのがコツです。

 とはいえ、何の対策もせずに寒風にさらすのは危険です。防寒方法は、畑のある地域の最低気温に応じて考えましょう。気象庁のホームページで、地域の気温や降水量を確認しておくのがおすすめです。

 私の畑の周辺では、真冬でも最低気温がマイナス5℃を下回ることはまずありません。この程度であれば、防虫ネットを掛けておけば十分です。むしろ、保温栽培によく使われる穴あきの透明フィルムでトンネルを作ると、蒸れてしまう恐れがあります。

霜除け目的なら防虫ネットで事足ります

 初めてエンドウを栽培したときのこと。3月にジャガイモの種イモを買いに行ったついでに、エンドウの苗も購入して植えてみました。ところが、株はあまり大きくならず、たいして収穫できませんでした。それに比べ、秋の終わりにタネをまいた株は、春になるとぐんぐん育ち、たくさん収穫できます。地上部には目立った変化がなくても、冬の間にしっかり根を張っているのでしょう。

ソラマメとエンドウを防寒すると年内の作業は終わり

春に生命力が爆発する

 エンドウとソラマメを植えつければ、年内の作業はひとまず終了。翌春には再び、この2品目から畑仕事が始まります。3月になると、エンドウはつるを伸ばし始め、ソラマメはわき芽を出してきます。エンドウは、つるがネットに絡みやすいよう、少し手助けしてやります。

 ソラマメは、脇芽を放っておくと、莢が小さくなりがちです。1株あたり5〜6本になるよう、余分なわき芽を取り除きます。

 もうひとつ厄介なのがアブラムシ。防虫ネットを掛けていても、アブラムシ対策にはなりません。芽の先端にびっしりと付くので、私は芽を1本ずつ指でしごいて落とし、有機JAS認証の殺虫スプレーを散布しています。

気持ちわるいものをお見せしてごめんなさい。ソラマメの生長点にはアブラムシがびっしり

春になったらソラマメは防虫ネットを外し、倒伏防止用のPPひもをトンネル支柱に張り巡らせます

エンドウはネットを張って、つるを誘引。伸びの早さに毎年、驚いてます

 エンドウは4月10日ごろから、ソラマメは5月の連休明けごろから本格的な収穫期を迎えます。先ほど記したように、エンドウは莢の状態に応じて使い分けられるので、大きさや厚さを気にせず収穫します。ソラマメは、さやが地面に対して水平より下を向いたころが収穫の目安です。

ソラマメは7~8株もあれば、一度の収穫でこれくらいとれちゃいます

 ソラマメは11月半ばまで、エンドウは12月初めまでにタネをまけば、栽培は間に合います。寒い冬の間に根を張り、春の訪れとともに一気に伸び出して、次々と莢をつけるエンドウとソラマメ。そこには、植物のたくましい生命力と、育てる喜びが詰まっています。効率を追い求めて始めた話でしたが、こうして考えると、効率なんて言葉は吹き飛んでしまいますね。
(2026年11月1日)

【プロフィール】

著者:妻木土岐夫(つまぎ ときお)

東京都心にあるマンションのベランダでミニトマトやルッコラを作るうち、栽培への興味が爆発。子どもが大きくなってきたこともあり、思い切って田園地帯へ移住した。畑のある暮らしに大満足しているが、難点は畑作業に割ける時間が足りないこと。月〜金は1時間20分の道のりを通勤してフルタイムで働き、週末に挽回するスタイルで畑を維持している。バイクに荷物を括りつけ、6〜10月は海釣り、11〜5月はキャンプもしたいので、段取りが命。

現在、借りている市民農園には30組の利用者がおり、第一線を退いて畑仕事に励んでいる様子を見るにつけ「早くあの人たちのようになりたい」と羨ましい。この連載では、畑デビューから10年がたち、今では無農薬・無化学肥料栽培で年に40品目を作るまでになった経験をもとに、勤めと両立するノウハウを中心にお伝えします。失敗談も恥ずかしげもなく披露しますので、どうぞご期待ください。(妻木)