タマネギ
- 小
- 大
文字サイズ
①作物特性
タマネギには熟期別に早生種から晩生種までの種類があります。早生種は栽培容易ですから初心者にはおすすめで、春先に収穫できる葉タマネギや新タマネギは、家庭菜園ならではの旬の味覚と言えます。更に中生種から晩生種に挑戦して貯蔵できるようになれば、翌年1・2月まで長く利用できますから、家庭での常備野菜として重宝します。また赤玉種も作っておけば、サラダなどのちょっとした彩りに大変便利です。
タマネギ栽培のポイントは、それぞれの品種の熟期の違いをよく理解して、タネまき時期を間違えないことです。早まきで植えつけまでに苗を大きくし過ぎたり、越冬中の肥料不足は、トウ立ちを引き起こす可能性を高めます。また近年は暖冬傾向ですから、タマネギ栽培に大敵のべと病の予防も重要です。冬の間に病気になっている株を抜き取り、農薬を適切に使って防除するなどの対策が必要になってきています。
②タネまき
‘苗半作’とも言われるほど苗の出来の良否がタマネギの場合収穫物の良否に直結します。雨による冠水害を予防するため、高さ15cm程のうねを立て排水を良くしておきます。タネまき床には1㎡当たり堆肥2.5kg、苦土石灰100g、化成肥料60gを施し、良く耕しておきます。堆肥や苦土石灰はタネまきの2週間以上前に施しましょう。
約10cm程度の間隔で深さ1cm弱程度のまき溝を作ります。
タネは約5mm~1cmの間隔ですじまきします。覆土して軽く鎮圧し、水をたっぷりやり、出芽まで水分が切れないように管理します。
乾燥を防ぐため、新聞紙等で播種床を覆うのも有効です。通常1週間ほどで芽が出始めますから、注意して観察し、芽が出始めたら覆いをはずします。
タネまき後約1ヶ月の本葉2枚目の頃を見計らって1㎡当たり40g程度の化成肥料の追肥を行います。同時に手鎌などを使って条間を耕し、土を柔らかくして土中に空気を入れましょう。
セルトレーを使って苗づくりをする場合は、水やりの際に定期的に液体肥料を施します。
③畑の準備
1㎡当たり堆肥2.5kg、苦土石灰100g、化成肥料60gを施し、良く耕しておきます。堆肥や苦土石灰は定植2週間以上前に施しておきます。
家畜の堆肥や有機質肥料はタネバエなどの害を被る可能性があるため、2か月前までに施します。酸性の強い黒ボク土などの火山灰土の畑では、根張りが弱くなる傾向にあります。そのため苦土石灰の代わりに過リン酸石灰を施す方が良いでしょう。
④植えつけ
タネまき後55~60日頃に植えつけます。苗床から抜きとり植えつけに適当な苗を揃えます。土が硬くなっている時には根を傷つけないように周りからシャベルやスコップ等で土とともに掘りあげてから苗を引き抜きます。長さ約20~25cm、茎の太さ6~7mm程度の苗を選びます。
上の写真の右半分のように、根元が既にふくらんでいるもの、曲がっているもの、細すぎるものは取り除き、左半分のような苗を選びます。
条間15cm、株間15cmほどの間隔で植えつけます。浅植え過ぎると根の活着が遅れたり、霜に持ち上げられたりする可能性が大きく、逆に深植え過ぎると苗が傷んだり、酷ければ枯死する可能性があるため、茎の部分が1.5~2cm程度が土に隠れる程度で植えつけます。
水はけの悪い粘土質の畑ではやや高うねにすると良いでしょう。またマルチを利用すると、雑草防止や冬場の乾燥、春先の地温確保などに有効です。
植えつけてすぐは葉が萎れたようになりますが、数日して根が土に張ってくると葉が立ち上がってきます。降霜地域では、根が切れて持ち上げられることがあります。そのままにしておくと枯れてしまうので、再度植え直します。
⑤追肥
早生種は12月と2月に、中生~晩生種は12月と3月に、それぞれ化成肥料を1㎡当たり25g施します。
⑥その他の管理作業
タマネギ栽培で最も注意しなくてはならない病気はべと病です。平均気温15℃になった4~5月頃に雨の多い時期に広がりやすいかびの一種です。近年べと病の大発生が問題となっています。
年内に予防的に農薬などを使って消毒すること、さらに植えつけ後越冬前に感染し、潜伏して越年した場合、葉が開いて垂れるようになります。このような株は感染源となるので、見つけたら引き抜いて畑から持ち出し処分することが重要なポイントです。
⑦収穫
すぐに食べる場合は肥大しているものを倒伏前に収穫しても良いですが、貯蔵の場合は全体の7~8割の茎葉が倒れたら収穫適期です。
収穫は茎を持って引き抜きます。雨の日や土が湿気ている時には収穫を避け、数日間晴天の続く日を選んで収穫しましょう。
晴天日が続けば2~3日そのまま畑に転がして乾燥させ、その後取り込みます。
⑧貯蔵
雨の当たらない、風通しの良い場所に取り込みさらに乾燥させます。
5~6個の葉を束ね縛って吊るしておくのがベストです。ミカンネットやストッキングなどを利用するのも意外と重宝です。
数が多ければ風の通るプラスチックコンテナでの貯蔵も便利です。
⑨ホームタマネギの栽培方法
年内から早春にかけて収穫できるのが特長です。通常タマネギは秋にタネをまいて5~6月に収穫しますから、冬から春にかけては貯蔵したものしかありませんから、この時期にフレッシュなタマネギを食べることができるのはうれしいことです。栽培期間も短いので初心者でも取り組みやすい品目です。
年内に収穫するためには植えつけ適期が8月末頃と短いので、適期を逃すと小さなタマネギしか収穫できないので充分準備しておきます。また植えつけは残暑の頃ですから萌芽が遅れないよう土壌水分だけでなく、地面の温度を低くする目的で白色の夏用マルチは有効です。
株間10~15cm、深さ数cmの植穴に枯れた根のついている方を下にし、種球の上部がわずかに隠れる程度に埋め込むように植えつけます。
芽が出てきて数センチの頃から積極的に追肥して太らせます。2週間に1回の頻度で、1㎡当たり30gの化成肥料をマルチの上からパラパラと施します。
葉が倒れ始めたら収穫期です。株元を持って引き抜いて収穫します。