マメ科野菜のタネ

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はじめに

自家採種に関する記事がしばしば雑誌などでとりあげられます。在来品種を自家採種で維持し、種子の交換会なども開かれているようです。その中で比較的多かったのはマメ類であったと記憶しています。地域固有の品種が多いこともあり、また未成熟の莢(さや)や種子を野菜として利用する品種は、収穫後の畑で自然に種子ができていることもありますから比較的容易にタネがとれると思われ、読者の中にはマメ科野菜の採種はそう難しくないと考える方もおられるかも知れません。

しかしお客様に安心して使ってもらう大量のタネを安定的に供給するとなると事情は異なります。今回はそのようなマメ科野菜のタネ採りの現場を、技術的なポイントごとにご紹介したいと思います。

ポイント1;採種に適した地域・作期を見極める

トーホクで扱っているマメ科野菜には、若さやを利用するインゲンやエンドウなどの他に、未成熟な種子を茹でてそのまま食べて楽しむエダマメやソラマメ、さらに完熟させて煮豆などにして食べるアズキやササゲ、インゲンマメなど様々です。これらマメ科植物の原産地は様々で、それぞれ生育適地が異なります。熱帯性の気候を好む種類もあれば、比較的涼しい気候を好む種類もあります。それぞれの種類に応じた採種適地を見つけることが良いタネを生産する基本です。生産部門のスタッフは採種に適した場所を世界中から探しだし、最適作期を現地の人と相談して作付けし、種子を生産しています。

ソラマメは登熟期に雨の心配のない北米が適しています。

ササゲは熱帯性ですから東南アジアが採種適地です。

エダマメは日本国内で採種されています。

ポイント2;旺盛に生育すれば良いタネがとれるわけではありません。

マメ科植物は、茎や葉が旺盛に育てば育つほど、タネに栄養が行き届かず充実したタネが収穫できない結果となります。つまり旺盛に育てばよいというわけではなく、最後までバランスのとれた生育を続けることが採種栽培のポイントです。そのノウハウは一朝一夕で得られるものではありません。品種ごとの生育特性を熟知して、それぞれに応じた肥培管理で栽培することが重要です。

エンドウの生育状況。

インゲンの生育状況。

登熟中のササゲの様子。

登熟中のシカクマメの莢。

登熟期のナタマメの莢。

ポイント3;刈り取り後のタネの乾燥の難しさ

マメ科野菜のタネは充分乾燥できてないと、たちまち寿命が尽きてしまいます。一方乾燥しすぎると粒が割れ、あるいは表皮が裂けて正常に発芽しないタネになってしまいます。莢ごと収穫して天日で乾燥させ、その後脱粒して莢から種子を取り出しますが、取り出した後は半日陰でじっくりと乾燥させます。そして適性含水率になった頃合いを見計らい集荷します。この段階は非常に重要な段階で、細心の注意を払って適正な含水率になっているかを確認します。

登熟期のエンドウ。下から順に登熟したさやを摘み取り、乾燥させます。

エダマメの刈り取り前の状態。

乾燥中のインゲン。日陰と日向を使い分けて乾燥させます。

刈り取って乾燥中のエンドウ。開花期が長いので登熟順に摘み取り乾燥させます。右側は乾燥が終わったもので、これから脱粒されます。

ササゲのタネ。脱粒後、場合によっては人手で選別します。

おわりに

マメ科野菜と一言ではまとめることはできないほど様々な種類があるのですが、それらのタネの生産過程を大まかですが紹介しました。採種には多くの企業秘密的な技術があります。例えば充実したタネを生産するために病気の発生を抑える技術や、タネにキズを付けないような脱粒方法など、多くのノウハウが蓄積されて安定的な供給が可能となっています。

詳細まではお伝え出来ませんでしたが、採種地が世界各地にあり、それぞれに最適な方法で採種されたタネが皆様の手元に届いていることを理解してもらえましたなら幸いです。今後もトーホクのタネを安心してご利用ください。